「ナイト列車 ドリーム号」~アーシャの力(1/8)

文・泉あおり  

ドドドぅ、ドォォッ!
(ま、まただ。また『あれ』がやってくる!)
駅前のロータリーで、バスを待っていた時田レン子の目の前が、真っ黄色になった。
レン子は、いそいで目の前のベンチに座った。膝が震えている。こぶしで胸を叩かれるような感覚は、間違いなく『あれ』の合図だ。
一瞬、辺りが光った。まるで、目の前でカメラのフラッシュをたかれたようだった。
つぎの瞬間、レン子の目の前の真っ黄色な世界に、パパパと映像が流れはじめた。
「うっ、ああ・・・うぅぅ――」

とっさにレン子は、バス停から駅に流れていく人だかりを見つめた。
「赤いコートの女性・・・?」
コートの女性を、レン子はジッと心の目で追った。彼女の背後から、野球帽の男が走ってくる。
「だめっ、逃げて!」
嫌な予感がした。レン子が立ちあがると、膝の学生カバンは、地べたに落っこちた。

「きゃあっ! だれかっ、ひったくりよ!」
予感は的中した。コートの女性は叫び声をあげ、ロータリーで立ちつくしている。彼女の視線の先には、ポーチをにぎって、駅に疾走していく、野球帽の男の姿があった。
「だ、大丈夫ですか?」
ショックでぼうぜんとする彼女に、男が声をかけた。
それは、丸めた新聞紙をにぎる、背の高い男だった。

「大丈夫。ぼくが、取り返してきますからっ」
男は、彼女を安心させるようにうなずくと、すぐに腕をふって、駅へと走っていった。
ドドドォォ――。

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泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員