「ナイト列車 ドリーム号」~アーシャの力(2/8)

文・泉あおり  

キーンコーンカーンコン。
「で、レン子が遅刻しちゃったのは、例の千里眼を使ったから。そういうこと?」
レン子は、こくりとうなずいた。
「だからって、先生には言えないなぁ。未来が見えたから、遅刻しました、なんてねぇ」
「あー。どうしたらいい、たか子? 今月もう3回目だよ。『ざます』も、キレちゃうよぉ」

クラスメイトの鈴木たか子は、いつもながらウンザリした表情だ。
席で頭をかかえるレン子を見て、「はぁ」とため息をつく。
中学2年生の時田レン子にとって、たか子は心を開ける、数少ない友達の一人だった。

「時田さん、誰が、ざますですか?」
「ひっ」
とつぜん、後ろから声がした。
ゆっくりと、レン子がふりかえる。
「あ、ざます・・・いや、今田先生っ」
「また、遅刻ざますか?」

いつのまにか、教卓には、英語担当の今田先生が立っていたのだ。
ざますのメガネフレームが、きらりと光る。
「今月に入って、4度目の遅刻ざますよ」
「すみません・・・あ、3度目ですぅ」
シュンとしつつも、レン子は訂正した。

「3度も4度も同じざます!」
ざますが教卓に、ドンとラジカセを置く。
「ひっ、すみませんっ」
「中学2年生にもなって、いったい、なにをやってるざますかっ。だいたい、あたくしたちの時代は、淑女たるもの・・・」

ざますの説教は、それから5分も続いた。
そのあいだ、周りの生徒は先生の語尾にばかり反応し、ときおりレン子を見やっては、クスクスと笑った。
(・・・ハァ、さいあくだぁ)
この妖しい力を知っているのは、親友のたか子だけ。
ほかに相談できる人はおらず、もちろん、レン子は両親にも話していない。

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員