「ナイト列車 ドリーム号」~アーシャの力(3/8)

文・泉あおり  

レン子はそれを、恐る恐るつまみあげた。
どう見ても、それは電車の切符だった。
「え、ど、どうしてっ」
スマホをだし、液晶の光で、もういちどたしかめてみる。

「切符だ。えっと、乗客のみなさま? この切符を持って、寝てください? 10月13日、へぇぇ、しかも今日の、日付だぁ」
前の席の人が、ふりかえった。
あわててスマホの電源を落とす。

レン子は、ちょっとしたパニックだった。
(ポップコーンに、切符? なぜ!)
ふぅ、と意識して、ひと呼吸つく。
(切符を持って、寝る? なんでっ!)
どういうわけか、心臓がドキドキしている。

ためしに、にぎった切符を胸に押しつけた。
(気味が悪いけど、でも、気になるなぁ)
たか子は、隣でぐっすりと眠っている。
(起こしたら、怒るだろうし・・・。うーん。まあ、きっと寝れないとは、思うけどね)

迷ったあげく、レン子はイスに深くもたれた。
劇場内は、破壊音や叫び声やらが飛びかっている。けれど、不思議とあくびがでた。
(なんだか、寝れそうだぁ、ハーア)

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員