「ナイト列車 ドリーム号」~アーシャの力(5/8)

文・泉あおり  

「行き先は、オレも知らないよ。すべてを知ってるのは、このドリーム号だけだから。あ、それとおれの名前は片桐」
そう話す片桐は、前をむいて運転レバーをにぎっていた。
まだ、一度も目を合わせてくれていない。
こんな時間と空間がしばらくつづくと思ったら、なんだか気持ちが落ちつかなくなってきた。
だからレン子は、髪をいじったり、咳き払いをしてみたりして、なんとか気を引こうとがんばった。

「・・・」
(ハハ、ダメか・・・)
怒ってるのか、親切なのか。ハシゴを上るときに助けてもらった記憶が、はるかむかしのことに感じてしまう。
けれど片桐は、なぜかレン子が聞きたいことを、勝手に察して答えてはくれた。
「あ、そうだそうだ! おれはこのドリーム号の、運転士なんだ」
(男って、よくわからない)

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員