「ナイト列車 ドリーム号」~アーシャの力(6/8)

文・泉あおり  

「もうすこしだ、アーシャ。行こう」
(アーシャ?)
レン子は、ポカンとした。

「なんだ? 高山病で、記憶でも飛んだか?」
男は、レン子以上に、不思議な顔をする。
「俺だよ、ラジープだ! まったくアーシャは、サドゥー失格だな。いそがないと、今日の修行も終わらないぞ。ほら、すすめ!」

(ラジープ?)
そのラジープが、レン子の手を取った。
レン子を引っ張って、山道を歩きはじめる。
どうも、びっくりしているのは、自分だけじゃないようだった。
ラジープは、むりやり焦りをかくすように、必死に話しかけてきた。

「い、いいか・・・。サドゥーは、苦行僧のことだ。俺たちはチャクラ、つまり超人的能力を開花させるため、毎日キツイ修行を積んでる。ど、どうだ? 思い出したか?」
足は動かすが、レン子の目は点だ。

「おいおいマジかよっ。隣町のオッサンも、チャクラが開いて、たしか記憶がっ・・・」
あやしい言葉をつぶやくラジープに、レン子の顔は、どんどん引きつった。
「だ、大丈夫だって。オーバーヒートみたいなもんで、記憶が飛ぶのは、一時のことさ」
(そ、そういうことじゃなくって・・・)

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員