「ナイト列車 ドリーム号」~アーシャの力(7/8)

文・泉あおり  

ラジープは山道を歩くあいだ、レン子を安心させようと、しきりに声をかけてくれた。
二人は、1時間ほど谷を登りつめた。

「ふぅ、着いたぜ」
「え、ここって?」
「そうだ、ここがケダルナート寺院さ。天下のヒマラヤの、修行場だ」
「やっぱり、ここって、インドだったのぉ?」
レン子は、白い教会のような建物に、目をパチクリさせた。

始終おどろくレン子に、ラジープは降参とばかり、首の数珠をつかんだ。
「やっぱり記憶喪失か・・・おお、神さまぁ」
ラジープが、左右に大きく首をふる。
「と、とにかく中に入って、シヴァ神に挨拶だ。・・・はぁ、オレたち、どうなるんだぁ」

真っ暗な寺院に、足を踏み入れた。
すると、レン子は、自分の体の異変に気がついた。
(え、いつのまに? この服って!)
自分も全身に、サドゥーの衣装らしい、枯葉色の衣を巻いているのだ。
とつぜん、こげ臭いにおいがした。

「へ、け、煙?」
レン子の視界は、灰色だった。
汗がでてきた。
見ると、レン子の周りを、熱風がとりかこんでいるのだ。
「あ、アツいっ」
「逃げろっ! 火事だ、火事だぞっ!」
誰かが、寺院の外でさけんでいる。

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員