「ナイト列車 ドリーム号」~ゴーストガール(2/9)

文・泉あおり  

「あんたあっ、だあれええ!」
「でたああっ、オバケぇっ!」
電話ボックスの中で泣きわめく美琴に、オンナも負けじと声を荒げてさけんできた。

「そこでぇ、何してるうぅっ」
「わーんっ、ここで夜を過ごしたいだけよっ」
「ここぉ、あたしの、場所だからああ」
そこでオンナは、声のトーンを上げた。
「あ、た、し、の、場所だからああ」
(ぐすっ――へ? あなたの場所?)
「ちょっと、お邪魔するわよ」
すると、自分はオバケだと宣言するように、オンナはすうっとガラスをすり抜けてきた。

(ひ、扉を開けずに、中に入ってきたわ!)
ところが、息をのむ美琴には目もくれず、オンナは受話器を耳に当て、番号を連打した。
ピポパポッ、ポピピピピッ!
(私を、呪い殺すんじゃ、なかったの?)
チラと見上げると、オンナには色気があると、美琴は思った。片手で、ロングの茶髪をかきあげるしぐさ。手入れの行き届いた水玉のネイル。それに彼女が入ってきてから、ここは石鹸の良い香りが漂っているのだ。

(この人、デキる大人のオンナだわ!)
彼女は、電話機の上をコツコツ叩いて、相手の応答を待っていた。
「ああ、出ないわねぇ」
そこでも美琴は、ふと思うのだった。
(あーん、このオバケ、センスいいかも!)

すると、オンナの指が止まった。
とたんに息をすいこんだ彼女は、
「オマエのせいだあァ。呪い殺してやるゥ」
眉根を寄せて、うめくように言ったのだ。
「あ――切れちゃったわ。ったく、アイツめ! 寝ぼけやがって、あたしが誰だかわかってやしない! あ~、ムカつくぅ~っ」
さけんで地団太を踏む彼女は、それから後3回、あきらめずに電話をかけ続けたのだった。

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員