「ナイト列車 ドリーム号」~ゴーストガール(8/9)

文・泉あおり  

美琴は、ドリーム号の運転席に座って、しばらくひとりで顔をふせていた。もう涙は枯れて、これから妹をどう助けようかと、そう考え始めた時だった。
ガタッ!
とつぜん、運転席のドアが開いて、美琴はビクっとふり向いた。

「大丈夫、オレだよ。もうスクリーンは燃えて散った。ミスターゴッドは追ってこないさ」
片桐の瞳は、また青い輝きを取り戻していた。そこで帽子をかぶり直した片桐は、ゆっくりと美琴の隣に座って、話しはじめた。
「ミスターゴッドは、物質界の神だ。死んだ人をあの世に送るから、死神でもあるけど」
淡々と話す片桐に、美琴は首をふる。

「でも、あいつは妹に言ったのよ。親の命と引き換えに、この世にとどまれって!」
「死神は、あの世に死者を送る。だが、ミスターゴッドの本音はちがうのさ。あいつは自分が作った物質界を、なにがなんでも継続させたいんだ。だからなるべく多くの魂を、この世界に縛りつけておこうと、しているのさ」
その意味が、美琴にはよくわからなかった。
それを察したように、片桐はさらに続けた。

「物質界は人間の欲望でできている。未浄化霊は、そんな人間を、あおる役目を果たしているんだ。つまり、車のガソリンだよ」
「役目? ガソリン?」
「そう。未浄化霊が放つ、恨みのエネルギーは強い。それは多くの人間に伝染して、同じような体験を繰り返させるんだ。だから人間は、死んでもまたすぐにこの世界に戻ってくる。未練を、果たそうとするわけさ」
片桐の言葉に、美琴はハッとつぶやいた。

「終わりが・・・ないのね」
「そう。終わりがないゲームと、同じ」
息をつき、また帽子をかぶり直す片桐を見て、美琴は考えた。
(終わりがないゲームは、やればやるほど悔いを残すだけ・・・)
良くも悪くもその想いが、物質界の継続につながっているなんて・・・。
(・・・かおりさんも、きっとそうなんだわ)

泉あおり について

兵庫県神戸市在住。 童話とエンタメ系児童小説を書いています。 趣味は妻とのさんぽ。とくに山から神戸の景色を見るのが大好きです。 日本児童文芸家協会 研究会員