ぼくたちは、エージェントだ。
エージェントっていうのは、ひみつのしれいをもらって、かつやくする人のことだ。
ぼくはエージェントたかし。もう小学校1年生のお兄さんだ。
弟のエージェントつよしは、あと少しで5さいだ。
今日は、しれいかんから ひみつのしれいが出なかった。
ぼくたちはおとなりのマンションであそぶことにした。
おとなりのマンションは、表に小さな広場があって、マンションの子たちとあそんだりできるのだ。
「にいちゃん、はやく~」
「ちょっとまってよ。ママ~、くつひも、むすんでよ~」
ぼくはエージェントだが、いつもはふつうのどこにでもいる1年生なのだ。
くつひもがうまく結べなくても、まぁ仕方ない。
「ぼく、さきにいってる~」
つよしは、待ちきれなくて、先に行ってしまった。
「つよし、チョコレートひとりでたべるなよー!」
つよしには、おやつのチョコレートを持たせてある。広場で食べるのだ。
本当は、ぼくが持っていきたかったんだけど、つよしがどうしても持ちたいっていうから、持たせてやった。ぼくってエライ。
「ひものないくつで行ったらいいのに」
ママがやっと出てきてくれた。
「だめ。きょうは このくつをはくって きめてたの」
ぼくが足をつきだすと、ママはくつひもを きれいなちょう結びにしてくれた。
「いってきま~す」
「いってらっしゃい。つよしのめんどう、よ~く見てやってね」
ママの声を背中で聞きながら、ぼくはおうちを飛び出した。