14 地球とお別れ
さいごにアカネたちがおとずれたのは、「北極ミュージアム」でした。
そこでは、オーロラを見ることができました。
「オーロラは、地球の大気と太陽風とのまさつで生じるげんしょうです」
館内のお姉さんが説明してくれました。
「そっか、なるほど」
それを聞いてアカネは感心してしまいました。
するとカレンちゃんが、不思議そうな顔をしてアカネにたずねました。
「どうしたの?」
「うんとね」
アカネが照れくさそうに答えました。
「なんだか、パパが大気でママが太陽風に見えてきちゃったの」
「大気に、太陽風?」
「うん。パパね、ここにきてから、ずっとママの手をにぎってるでしょう」
アカネとカレンちゃんは、オーロラをながめているパパとママに目をやりました。
「パパのひとみが、とってもすずしげで、なんだか地球の大気のように見えてきたの」
アカネがそう言うと、カレンちゃんは笑顔になりました。
「アカネちゃんのママ、パパに手をにぎられて、ほほが赤くそまってるね」
「うん。うつむいたママの顔なんて、なんだか太陽みたいでしょう」
アカネとカレンちゃんは、二人にばれないように、静かに笑いました。
「パパとママ、ケンカもするが、美しい」
アカネが小声で言いました。
「アカネちゃんは、俳句の天才だね!」
カレンちゃんが言いました。
パパもママもたまにはケンカもするけれど、仲のいい二人のすがたが、アカネにはキラキラとして見えたのです。
しかし、だんだんとアカネは二人を見ていてはずかしくなってきました。
おーい、カレンちゃんもいるんだぜ、とアカネは心のなかで念じてみましたが、パパとママの世界にはとどいていきそうにありませんでした。
だからアカネは、そっと目をとじて時間がすぎるのを待ちました。