水のお城(5/6)

文・伊藤由美  

お城へ帰り着くと、窓を開け、さっそくなわばしごを放ちました。
なわは下へはたれずに、上へ上へとのびて行き、とうとう、天守のてっぺんに届きました。
水晶玉は、すぐそこです。

リンゴ王妃はくつをぬいではだしになると、なわばしごを上っていきました。
それは目もくらむような高さでした。リンゴ王妃は、何度となくおじけづきましたが、どうしても世つぎの王子がほしくて、けんめいに、なわを上っていったのです。

とうとう、天守のてっぺんの水晶玉に手をかけた時、リンゴ王妃は、いっしゅん、その吸いこまれるような美しさに、うっとりしてしまいました。

真夜中、雲ひとつない星月夜を映して、水晶玉は、あたかも、その中に、もう一つの夜空をくるみこんでいるようでした。
でも、見とれている場合ではありませんでした。王妃に気づいたお城の人々が、大勢、下から見上げていたからです。

3 / 41234

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井県福井市在住。 『指輪物語』大好きのトールキアン。その上にトレッキー(「スター・トレック」ファン)でシャーロキアン(「シャーロック・ホームズ」ファン)と、世界3大オタクをカバーしている。