ピイの飛んだ空(1/8)

文・七ツ樹七香   絵・久遠あかり

「ごめんな。昨日のやつ、おまえがよろこぶと思ったんだよ・・・…本当に」
茶色くて丸っこい、つやつやした虫。テントウムシぐらいの大きさで、おあつらえむきのエサだと考えていたのにとんだ目にあわせてしまった。

やがては野性に帰るピイだ。いろんなものを食べたほうがいいにちがいないし、秋斗(あきと)が母親として、ちゃんと食べられるものを教えなければいけない。それが、こんなうら目に出ようとは・・・。

少し落ちこんだけれど、秋斗には今日も朝一の仕事が待っていた。
庭でピイの朝ごはんの調達をしなくてはならない。
秋斗は「待っていろよ」と声をかけて、おいしい虫を求め、勇んで庭に飛び出していく。
ピイが家にきて、もうすぐ10日。
巣立つまで、もうひと息のはずだった。

本作品は「第30回日本動物児童文学賞」優秀賞受賞作を一部平易に改稿したものです)

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。

久遠あかり について

(くどうあかり) 漫画家。主に児童向け、動物のお話を執筆。ハリネズミや犬を飼い自然と動物好きに。現在は保護猫と暮らしている。また、別名義(光晴ねね)で少女漫画やロマンスジャンルなどで活動中。 pixiv fanbox 光晴ねね https://nene-mitsuharu.fanbox.cc/