いすから去った王子(2/7)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

美しい王女

昔、あるところに、とても美しい王女がいました。
たくさんの若者たちが、王女に恋をして、結婚を申し込みました。
でも、王女は、決まって、こう、言いました。

「私の窓の下にいすをおき、100日間、すわり続けた方の妻になりましょう」
若者たちは、次から次と、挑戦しました。王女の部屋がある塔の下にいすをおき、昼も、夜も、すわり続けたのです。


だれでも、最初の10日ぐらいはがんばれます。
でも、20日、30日とたつうちに、あまりのつらさに、たえきれなくなり、あきらめてしまうのがふつうでした。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに