いすから去った王子(1/7)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「昔、ある所に、とても美しい王女がいた。
たくさんの王子が結婚を申し込んだが、王女はうんと言わなかった。
かわりに、王女は、こんなことを言った。
『私のまどの下にいすをおき、100日間、すわり続けることができた者と、結婚しましょう』
王子たちは、きそって、いすにすわったが、100日間もがまんできる者はだれもいなかった。
ある日、一人の王子が現れた。
王子は、来る日も来る日も、いすにすわり続けた。
そして、なんと、99日目間、すわり通したのだ。
ところが、どうしたことだろう!
99日目になって、とつぜん、王子は立ち上がり、去ってしまったのだ」

どうして⁉
だれだって、こう、聞きたくなりますよね?
少年も、
「どうして⁉」
と、聞きました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに