いったいだれの歯?(4/7)

文・夏美  

「こんなおそろしい歯、もういらない」
いっそぬいてしまおうかと思いました。
けれど、自分でペンチで歯をひっこぬくことを考えたら、たまらなくおそろしくなって、とうとうポロポロ涙をこぼして泣き出してしまいました。

しばらくそんなフミヤを見ていたネズミが、気のどくに思ったのか、おくの暗がりに向かって「おーい」とだれかをよびました。
あらわれたのは、ブチでした。
「おまえ、この子の歯を持っていったやつ見てないかい?」
「見たよ」

ブチがふつうに答えたので、フミヤはびっくりして、涙も止まってしまいました。
ネズミがしゃべるのだから、ブチもしゃべってもふしぎではなかったのですが。
ネズミが「教えてやりな」というと、ブチはめんどくさそうにうなずいて言いました。
「ついてきな」

夏美 について

大阪出身。童話やミステリーが好きで、少年探偵団や少女探偵ナンシーで育ちました。自分もそんな感じの、子供がワクワクできるようなミステリーやサスペンスを書けたらいいなあと思っています。ようやく落ち着いてパソコンに向えるようになった主婦です。尊敬する人はグラン・マ・モーゼスです。