がめ島うらしま館(11/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「ああ、家も村も、とっくの昔に無くなってしまった。知っている人はだれもいない。ひとりぼっちで、この先、おれはどうしたらいいだろう。
そうだ、竜宮城から帰る時、おとひめ様が、『困った時にはこの箱をお開けなさい』と言ったっけ。今がその時だ。よし、開けてみよう」

(ええ! ぜんぜん、話がちがうやない)
びっくりしている大介の前で、太郎は砂の上にこしを下ろすと、キラキラと美しい箱を開けました。
中から、ぱっと、白けむり! たちまち太郎はおじいさん・・・?
「やない! 消えちゃった!」
けむりの中からは、太郎の代わりに、一羽の鳥が現れ、「カルー!」と、一声、鳴いて、ひゅっと、雲の彼方に飛び去りました。
「あわわ。何や、この展開!」
大介は立ち上がり、箱に走りよって、中をのぞきました。
「何やろう、これ?」
箱の中に、さらに、デジタル時計のような金属の箱があって、数字が、ピカピカ、光っていました。
「これ、ひょっとして!」

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに