がめ島うらしま館(3/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤燿

「この先だよ」
3人は大介を先頭に走り出しました。
畑に囲まれた家々をぬけると、いきなり、目の前に大きな島が現れました。

「ほら、かめの形をしてるだろう。だから、がめ島」
かめが頭を外海に向け、浮いているような形です。
島をおおっている森が、ちょうど、かめのこうらに見えました。
「だったら、かめ島でしょう?」
「ちがうよ、がめ島」
「どうして?」
「どうしても」

こちら側の岸はぐるりを低いコンクリートのガードで囲われています。
そこまで行くと、目の下に波のくだけるいそや、島までの間に、ところどころ、とんがり頭を出している岩が見えました。
「こっちこっち」
大介の手まねく方へ行くと、船着き場でしょうか、海に下りるコンクリートの階段があります。
階段は水面より下に続いていて、波が、ポチャポチャ、洗っていました。

「あ、おねえちゃん、あそこにお宮がある!」
新一が島を指差しました。
なるほど、島の中腹に赤い鳥居があり、せまい砂浜からの石段も見えます。
「あれ、がめ島神社っていうんや。あの裏の森にはカブトムシが、いっぱい、いるんだぞ」
「え、カブトムシ! ぼく、行ってみたい」
美里はあたりを見回しました。

「ここからは行けないよ、しんちゃん。ボートとか、ないもの」
ところが、「行けるよ」と、大介。
「え、どうやって?」
「およいでだよ。さ、行こう!」
大介は事も無げです。
美里も新一も、その場で固まってしまいました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに