がめ島うらしま館(4/14)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「え?」
美里と新一は、きょとんと、海面を見つめました。
何も起こりません。
「えへへ。映画で見たんや」
「なあんだ!」
3人は腹をかかえて笑いました。

それから、草むらをかけまわったり、ガードの上を、バランスをとって、わたったり・・・。
真夏の太陽は三人を、じりじり、照りつけています。
「のど、かわいたな。そろそろ、もどろうか」
「うん、そうだね」
美里はうなずきましたが、新一は、ぽかんと、海を見ています。
「おねえちゃん、あれ」

新一の指差す方を見て、美里はびっくりしました。岸から島までが、すっかり、干上がっていたのです。
「大ちゃんの魔法がきいたんだね!」
新一は目を丸くしましたが、大介は「そんなわけない!」と、首をふりました。

「ははは。しんちゃん、これ、魔法じゃないよ。大ちゃんたら、引き潮の時間、ちゃんと、知っていたんだよ。そうでしょ?」
「いやあ・・・」
大介は首をかしげました。
「大潮の時やかて、今まで、底が見えるほど、潮が引いたことはない。けど、今がチャンス! 行こう!」
大介は船着き場の階段を、ぴょんぴょん、下りて行きます。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに