ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(6/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

6 事実は小説より奇なり

「今日みたいな波の荒い日は、海の底から波がヒスイを運んでくるんや。波打ち際で、ころころ転がってることもあるぞ」
白っぽい石を見つけたら、とにかく拾ってみろという、策作じいさんの教えを受けて、目を皿にする。
と、見つけた!
ヒスイ探しは、思ったほど難しいものでもないらしい。

「見てください!」
思わず駆け寄り、手のひらを差し出すと、
「それは石英や。浜にもどしたり」
策作じいさんはにべもない。
ちらりと視線を走らせただけで、歩き出す。

「えええーっ! これ、絶対、お宝級だと思いますが! 真っ白だし、こんなにきらきらしてて、きれいじゃないですかっ!」
「アホか、キツツキは」
「いえ、はい、いえ、はい、・・・もう、そんなことはどうでもいいです!」
「どうでもええんかいっ!」
どうでもええなんて、おもしろないなーとぶつぶついいながらも、ふり向いて、教えてくれた。

「石英はきれいやけど、白っぽいんやのうて、真っ白や。形もまんまるで、触るとつるつるしてるけど、指にすいつくみたいにすべすべやない」
「はい」
「それにな、その石、大きさの割に軽いやろ」
「はい、そんな気も」

しかし、「ほかし」と言われても、抵抗がある。
こんなきれいな石、捨てられるわけがない。
そっと、短パンのポケットにしのばせた。
なんてことを繰り返してるうち、ポケットは重くなり、短パンがずり落ちそうになってきた。
これは、いかん。
策作じいさんの言う通り、石を少し浜にもどそう。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。