つなぐ(1/10)

文・藤 紫子  

「うむむ、もう8時を回ってしまったか」
おじいさんは、よっこらせと、仏だんの前に座りました。
お線香をつけ、リンを鳴らしました。
「清枝さん。今日は神楽山の日だ。山で会おうな」
額に入った写真の人に、目を細めて語りかけました。

お供え物より、ひとつ高い段に飾っている写真には、着物すがたの若い女の人が写っています。はにかみ、にこやかに笑う女の人を、おじいさんはいとおしそうにながめます。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。