つなぐ(7/10)

文・藤 紫子  

窓口の奥にいたほかの駅員さんたちが集まってきました。
互いに意見を言い合っています。
そのうちに、新米らしい若い駅員さんが、駅長さんに発言しました。
「駅長。防犯カメラになら、どなたかがかけたときの映像が映っているのではありませんか? 警備会社に問い合わせしてみましょう!」
おじいさんはうれしくて、ぜひともお願いしたいと言いましたが、駅員さんたちのさんせいと反対の声でかき消されてしまいました。

窓口はすっかりそうぞうしくなりました。
おじいさんは駅長さんのあんないで、窓口の奥の部屋へ通されることになりました。

おじいさんはここぞとばかり、駅長さんにとうとうと語りました。
手を組んだままじっと聞いている駅長さんに、なんとしてもさんせいしてもらおうと、つい声高になっておりました。

駅長さんがゆっくりと大きくうなずきました。
「いや、わかりました。ようく、わかりました。それでは、こういたしましょう。わたくしどもでできる、せいいっぱいのことです」

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。