ふしぎなぴりーこぱん(1/7)

文と絵・エンプティ・オーブン

1 ぴりーこぱんが、やってきた

あんこちゃんは、ぼんやりしていた。
そろそろ学校に行く時間。
となりのへやでは、お母さんが朝のしたくをする音が聞こえている。
でも今日はもうちょっと、家にいたい気分。

「そろそろお母さんに、学校に行きなさいって言われちゃうだろうなあ・・・」
あんこちゃんは、この町に引っこしてきたばっかりだ。
新しい小学校では、だれともあそばないで、お絵かきをしてすごしている。
知らない子とお話するのははずかしいんだもの。
お友だちがいれば、本当はおにごっことか、かくれんぼをしてあそびたいんだけど。

「今日はお兄ちゃんもいっしょじゃないし・・・」
お兄ちゃんはクラブの『朝れん』で、先に学校に行ってしまった。
そういう日はお母さんがいっしょに行ってくれるけど、お母さんには校門までしかついて来てもらえない。
そこから先はあんこちゃん一人になってしまうから、お兄ちゃんがいない日は心細いのだ。

「学校行かないで、ハートちゃんとあそんでたいよ」
あんこちゃんは、つくえの上のノートを見た。
ノートの中では、さっきあんこちゃんがかいたハートちゃんがわらっていた。
ハートちゃんは、あんこちゃんが小さいころに考えたキャラクター。
ハートの体に、ほそい手足がついている。絵の中で、あんこちゃんとハートちゃんはいろいろなぼうけんをしているのだ。

「あーあ、学校に行く時間に、ならなければいいのに」
あんこちゃんは、へやの時計を見上げた。毎日見ているこの時計。まんなかに、ハンバーガーの絵がでかでかとかいてある。

エンプティ・オーブン について

1985年埼玉県生まれ。子供のころから本が好きで、自分でも絵本を作ったり、マンガを描いていました。二児の母になってからは、わが子に読み聞かせるための絵本を作ってきました。小学校の読み聞かせボランティアにも参加しています。娘がが小学生になるのを機に、童話を書き始めました。たくさんの人に楽しんでもらえるお話を書きたいです。