ふしぎなぴりーこぱん(6/7)

文と絵・エンプティ・オーブン

6 バイバイ、ぴりーこぱん

「時間が元にもどらなくなるって、どういうこと?」
あんこちゃんはどきりとした。
しんぞうがドックンドックン、大きな音をたてている。

「せかいがずっとねむったままになる、ってこと」
ぴりーこぱんが答えた。
「そう、あんこちゃんのお父さんとお母さんもずっとねむったまま」
キャンディチーズくんがその後につづけて言った。
あんこちゃんは、たしかに時間がもどらなくてもいいやって、ちょっとだけ思った。
だけど、ずっと時間がもどらなくなるなんて・・・
そうぞうしたら、目の前がまっくらになった。「ハートちゃん、どうして・・・?」
「ぴりーこぱん、そろそろあんこちゃんを元のせかいにもどしてあげよう。長くあそべばあそぶほど、あんこちゃんはわたしたちとのおわかれがつらくなっちゃうよ」
ハートちゃんは、あんこちゃんではなく、ぴりーこぱんに向かって言った。

「・・・やだよ。もっとみんなとあそびたい」
それに答えたのは、ぴりーこぱんではなく、あんこちゃんだった。
「あんこちゃん・・・」
「せっかくハートちゃんにも会えたのに!」
「わたしも、ずっとあんこちゃんとあそんでたい! でも、ダメなの」
あんこちゃんは、こんなひょうじょうのハートちゃんを、見たことがなかった。

「だって、時間が止まったままだったら、あんこちゃんは大人になれないでしょ?」
それから、あんこちゃんの絵とおなじニッコリえがおになって、やさしく言った。
「わたし、あんこちゃんがすてきなおねえさんになるのを見たいんだ」
「ハートちゃん・・・」
あんこちゃんがうごけないでいると、その手を引いて、ぴりーこぱんが言った。
「いそがなきゃ! あんこちゃんのおうちにもどろう」

エンプティ・オーブン について

1985年埼玉県生まれ。子供のころから本が好きで、自分でも絵本を作ったり、マンガを描いていました。二児の母になってからは、わが子に読み聞かせるための絵本を作ってきました。小学校の読み聞かせボランティアにも参加しています。娘がが小学生になるのを機に、童話を書き始めました。たくさんの人に楽しんでもらえるお話を書きたいです。