ふわり たまさぶろう

文・季巳明代   絵・もも りこ

「あぶないところを たすけて いただき ありがとうございます」
「おっかちゃん、けがが なくて よかったね」
ははネコに あまえる さんきちを みて、たまさぶろうの めが、かまぼこのように ほころんだ。

「こまったときは、おたがいさまよ。それより、こんど、どらはちが やってきたら、これを おわたしなせぇ。」
たまさぶろうは、ふところから にぼしのはいった ふくろを ははネコに わたした。
それから さんきちの ての ひらには そっと きんいろの いしを のせた。
「こ、これは!」
ながいあいだ、きびしい しゅぎょうを つんだ ネコにだけ、ネコがみさまから さずけられるという、まぼろしの ほうせき「マタタビいし」だ。
おまもりに もてば どんな ふこうも よりつかない。
ネコの せかいで、この いしの ことを しらないものは いない。
「こんな だいじなものを!」
「なあに、おやおもいの ぼうずに、ささやかな ほうび、でござんす」
「あ、ありがとうございます」
「たまさぶろうさん これから どこへ いくの?」
さんきちが さけんだ。
「さぁてな、あしの むくまま きの むくまま しがねぇ たびに でるまでだ」
「おいらも つれてって おくれよ」
たまさぶろうが いっしゅん たちどまって さんきちを ふりかえった。
ははネコが しんぱいそうに そのようすを みつめている。
「そうさなぁ、ぼうずが もっと おおきくなった ころに また えんが あれば あえる だろうよ」
それを きいて さんきちが ひとみを かがやかせた。

(さんきち、おっかさんを しっかり まもって やりなよ)
こころの なかで つぶやいて、とうげの みちを さってゆく、いきな すがたの たまさぶろう。
みおくる おっかちゃんと さんきちを、ゆうひが あかく てらしていた。

季巳明代(きみ あきよ) について

鹿児島県出水市在住 保育士時代に公募にはまり、幼年童話作家をめざす。 毎日童話新人賞優秀賞、新美南吉童話賞特別賞、など受賞多数。 作品に『てんぷら母ちゃん』(家族っていいね3・4年生収録/日本児童文芸家協会編/PHP研究所)』 『ウドちゃんとチョロくん』(ぼくたちの勇気)収録/編著/漆原智良/国土社)』 『よっていっきゃんせ!』(児童文芸収録/日本児童文芸家協会編)』 単著に『ひげなしネコ』『じゅんばんこ!』『四年変組』『りほちゃんのめざし』(以上フレーベル館)、『ひっこしはバスにのって』(銀の鈴社)。キンダーブック2に、『にんにんにんじゃえん どろろんぐみ』を連載中。(いずれもフレーベル館

もも りこ について

1981年生まれ、崇城大学芸術学科彫刻部卒業。 学んだ彫刻の技術を活かし、いろいろなことに挑戦中。