ぼくたちは夏の道で(1/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

1 旅のはじまり

「相棒、今年も、よろしくな!」
ペダルに乗せた左足に、力を入れる。
早朝の涼しい空気が、まわりで一気に風になる。
さあ。
いよいよ。
ぼくの年中行事、夏の旅のはじまりだ。
相棒は、3代目のマウンテンバイク。色は、初代からずっと同じの、コバルトブルーだ。
そして旅は、あの夏から数えて、8回目。

そう、あの夏。
「幸太、おまえも、もう4年生だ。今年からはひとりで修行の旅にでるのだ。そして、年の数だけ、ひとさまのお役にたつまでは帰ってきてはいかん」
とうちゃんが言ったんだ。
「しゅ、しゅしゅ」
「修行だ!」
「修行・・・」
修行の旅なんて言葉を、突然、耳にねじ入れられて、驚いた。驚きすぎて、ぶっ飛んだ。
怖くて、嫌で、泣きそうだった。いや泣いた。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。