ぼくたちは夏の道で(1/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

怖い顔つき、長身、若そうなのに自分をワシと呼び、性格はややこしそうだけど、いい人なのかもしれないな。
そんなことを、ふと、思う。
「はい、それがいいと思います。きっちりと、やってください!」
「で、どうだった? ワシ、イケてた?」
「迫真の演技でした! 一目見て、ぶったおれそうになりました!」
「おお、そうか、そうか・・・、って、人の話の腰を折るな! 練習をしていて、チャッピーが客を連れて来たようなので、」

「ああ、あの子、チャッピーっていうんですか? かわいいですね」
「そうだ。かわいすぎて困るほどだ。って、人の話の、」
「腰を折って、すみません。どうぞ続けてください」
「挨拶をしようとしたら、突然投げ飛ばされ、受け身をとる余裕すらなかったたワシを、おまえは大丈夫だと思うのか?」
その人が、鬼の首を取ったように言う。
が、この場合、それも、しょうがない。

ぼくは、この人を投げてしまった。
しかも、恐怖で、手加減忘れ、力いっぱい、おもいっきり。
「大丈夫だと、思いません。確かに、大丈夫ですか? と聞いてしまったぼくは、バカです。きっぱりと!」
ぼくは、深々と頭を下げる。

「どこか、傷めてしまいましたか?」
「いや、・・・大丈夫」
「そうですか。よかった」
「・・・では、ないような・・・」
「そうですか。ん? えっ?」
「足首を、ひねったようだ・・・」
「す、すみません」
「すみませんですめば、」
「はい! 警察はいりません」
「そうだ! おまえは、バカだが、学習能力はあるようだ」
「そうでしょうか?」
「ああ、よって、おまえを、只今から、ワシの助手2号に任命することにする」
「あ、ありがとうございます」
んんっ?
ついついお礼、言ってしまったけれど、これって、どういう展開なんだ?
ぼくには、さっぱり、わからない。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。