ぼくたちは夏の道で(3/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「夏祭りの花火の夜、ワシにゾンビの役を押し付けてまで、奴のすることは、デートに決まっている。そして、デートの後に、行く場所も、決まっている」
猿神さんの言っていたことは、こういうことだったのか・・・。

いつの間にか、花火は終わっていて、見上げた空に、星が流れた。

いつか黒岩さんの恋が成就しますように!

消えた流れ星に祈ってみた。
効き目、あると、いいけど。

「黒岩、ラヴちゃんのナビに、ふくふく亭をセットしろ」
「先輩、ぼくの車はRAV4ですから! ちゃん付けするの止めてもらえますか。それに先輩、ナビは嫌いじゃないですか」
「ふんっ。細かいことは気にするな。それに、ワシは最近、ナビにつっこみを入れるのが、楽しくなってきたんだ」
「わかりました。そう言えば、最近、そんな気もしていました。セットしますよ」
ふくふく亭を目指して、山道を下りて行く。
こんどは、車も通れる、広い道だ。

「・・・周辺です。気をつけて走行してく・・・」
「ふんっ。おまえ、もっと、きっちり仕事をこなせ! なにが、目的地周辺だ! きっぱりと言ってみろ! ここが目的地です、と!」
「さ、猿神先輩、その辺にしてもらえますか」
「なに? まだ、言い足りんくらいだ!」
そんな、すったもんだは、あっちに置いて。ふくふく亭は、真っ暗だった。
あきらめて、ぼくたちは、帰路に着く。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。