ぼくたちは夏の道で(7/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「チャッピー」
ぼくは、追いかける。
「チャッピー、チャッピー」
木々の奥へと走っていくと、よかった! チャッピーの姿が見えた。
こちらに向かい、走ってくる。
うしろに、白い猫をひきつれるようにして。

「パピ!」
ぼくを追い越した山野辺さんが、大きく腕を広げた。
すると、白い猫は、パピは、地面をけって、腕の中におさまった。

山野辺さんのあごの辺りに、頭をくいくい、くいくいと、すり寄せている。
満面の笑みを浮かべて、それを受け入れる山野辺さんを見ていたら、鼻の奥が痛くなってきた。
「なんか・・・、よ、よかった・・・。なっ、チャッピー」
ほの暗い森の中、パピの白い毛並が、うっすらと金色に輝いている。

「パピ、迎えに来たよ・・・。おまえ、どこに、いるんだ? わたしを、おねえちゃんを、おまえのいる、・・・おまえの体のある所に連れて行きなさい」
って・・・。
「山野辺さん、なに言ってるんですか? パピは、そこに、山野辺さんの腕の中に、いるじゃないですか」
「あのな・・・」
山野辺さんは、ためらうようにふせた目をあげ、
「とりあえず、一旦落ち着こう」
木漏れ日がゆれる辺りを指し示す。
「はい」
ぼくたちが、腰をおろすと、猫たちも前足をそろえて寄り添う。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。