ぼくたちは夏の道で(9/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「山野辺さん、それは、ちがうと思います」
「ちがう?」
「山野辺さんは、どう見ても、ぼくと同じくらいの年にしか見えません。それに、その、制服、高校のじゃないんですかっ!」

黒岩さん=チビの下級生、だって?
いやいやいやいや、そんなはずがない!
嫌、嫌、嫌、嫌、そんなの嫌だっ!
激しく拒否するぼくのノーミソ。

「しかも、黒岩さんは28歳って言ってましたし、体だってものすごく大きいし、チビの下級生には、ぜんっぜんっ、まあったく、見えませんっ! それに、黒岩さんが28歳なら、山野辺さんは29歳・・・」
「そう、この制服の件に関しては、わたしも理由がわからない・・・。気づいた時は、これを、着ていた。どうかな、29歳のわたしが着てても、おかしくないかな? コスプレイヤーみたいに、見えないか?」

「ぷはっ」
「なにが、おかしい?」
「コスプレイヤーって・・・」
「29歳で高校の制服といえば、そうなるだろ?」
淡々と話す山野辺さんに、ぼくは激しく抗議する。

「いえ、とても、似合ってます。違和感も感じません。高校生そのものです!」
「ありがとう。うん。そうかもしれない」
山野辺さんは、鏡を見ていないから不安だったけど、とつぶやいて、
「この通り、ショートカットだし」
と、短い髪を、指でさらりとすくってみせた。
髪型がそんなに重要だとは思えないけど、そんなことを言い合ったおかげで、気持ちはかなり落ち着いた。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。