エルとくるみとソラ(3/7)

文・七ツ樹七香  

しかし、ソラはあきらめない犬だった。
毎日くるみにしっぽをふるし、くるみが学校に行くときにはお見送りとおむかえを欠かさない。
「律儀(りちぎ)な犬ねえ」
「お母さん、リチギってなに?」
聞きなれない言葉にくるみが首をかしげると、お母さんが説明した。

「まっすぐマジメっていう意味よ。毎日、くるみの送りむかえに熱心でしょ」
「ふうん。わたしは好きじゃないのにね」
くるみは絵をかきながら、足元でねむっているソラのもんくを言う。そんなくるみにふくざつそうな顔でお母さんがたずねた。

「ねえ、くるみ。今度の日曜日でソラがきて2週間なんだけど。ソラのこと、やっぱり好きじゃない?」
「好きじゃないよ。わかるでしょう?」
「その絵、上手ね。ソラをかいてるのかなと思って」

くるみはいつもスケッチブックといっしょだ。絵はとくいで、今まで何度もコンクールで賞を取っている。
「・・・生き物をスケッチするのは大切って、前に絵の先生が言ってた。ちょうどいいからかいてただけ」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。