ゴホンゾンサマ(1/3)

文と絵・中西恵子

ようやく、東の空が少し明るくなってきました。
じろうがにわにもどると、トムはウトウトしています。
しかたがないので、トムをだっこしてじんじゃにむかいました。

「トムってば、ちっちゃいのにおもたいね。ああ、じてんしゃがあったらなあ」
じろうは、あせびっしょりになって、ようやく橋をわたりました。
「ほら、トム、じんじゃについたよ」
そういったとたん、トムは目をあけました。
そして、じろうのうでからとびおりると、おやしろにむかって、いきおいよくはしりだしたのです。

「トム、はいっちゃだめだよ!」
けれど、トムは、すこしひらいていたとびらから、おやしろの中にとびこんでしまいました。

中西恵子 について

愛知県新城市生まれ。 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。 第6回小学館童画新人大賞入賞。 絵本に『かえる』『ヘキサ、もりへいく』『トチノキのひっこし』『じろう、ひとりででんしゃにのる』など(以上福音館書店月間絵本「こどものとも」シリーズ、現在品切れ)、 さし絵に『たからものくらべ』(杉山亮作、福音館書店)、『点字の世界へようこそ』(黒崎惠津子文、汐文社)がある。 「らしさ」を追いかけて、七転八倒中。