ゴホンゾンサマ(2/3)

文と絵・中西恵子

じろうは、こわいのをすっかりわすれてききました。
「おじさん、トムになにをあげたの? トムはうちにかえったの? おじさんはだれ?」
こわい人はしばらくじろうをみつめていましたが、やがておごそかな声でいいました。

「トムにやったのは護符じゃ。トムの主人のやまいはまもなくなおるであろう。あんぜずとも、トムはぶじ、主人のもとにかえる」
じろうは、あんまりいみがわかりませんでした。
「じゃあ、おじさんはゴホンゾンサマなの?」
その人がこたえようとしたときです。

中西恵子 について

愛知県新城市生まれ。 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。 第6回小学館童画新人大賞入賞。 絵本に『かえる』『ヘキサ、もりへいく』『トチノキのひっこし』『じろう、ひとりででんしゃにのる』など(以上福音館書店月間絵本「こどものとも」シリーズ、現在品切れ)、 さし絵に『たからものくらべ』(杉山亮作、福音館書店)、『点字の世界へようこそ』(黒崎惠津子文、汐文社)がある。 「らしさ」を追いかけて、七転八倒中。