ゴホンゾンサマ(3/3)

文と絵・中西恵子

じろうが、小さなリュックサックをあけると、とても小さなクリがいっぱいはいっていました。
「わあ、ちっこいクリだなあ」
「ほお、そいつはヤマグリだ。店で売ってるクリよりうんとあまくて、うまいぞ」
「ええっ、そうなの?」
「まちがいない。おかあさんにゆでておもらい」
「うん! トム、ありがとう!」
すると、トムはいつかのように、もうスピードでかえっていきました。

「さて、ポチのさんぽにいこうかい?」
「その前に、ゴホンゾンサマにお礼をいってこようよ」
「おお、そうだな」

中西恵子 について

愛知県新城市生まれ。 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。 第6回小学館童画新人大賞入賞。 絵本に『かえる』『ヘキサ、もりへいく』『トチノキのひっこし』『じろう、ひとりででんしゃにのる』など(以上福音館書店月間絵本「こどものとも」シリーズ、現在品切れ)、 さし絵に『たからものくらべ』(杉山亮作、福音館書店)、『点字の世界へようこそ』(黒崎惠津子文、汐文社)がある。 「らしさ」を追いかけて、七転八倒中。