サワガニの理容室(3/6)

文・ねこはるさめ  

〈しかし、どうしたものか〉
サワガニは注文におうじたものの、ハリネズミのかたくとんがった毛をどうしたものかと考えこみます。

ハリネズミの針(はり)は、金ぞくなんかではなく、体毛の一本一本がまとまってかたまっているものですから、ヘアスタイルのひとつとも言えなくもありません。
サワガニはためしに自分の手バサミで切ってみましたが、思った通り、かたくてとても刃が立ちませんでした。

うでを組み考えていると、「そうだ!」と思いつくものがありました。
〈あついおゆでむしたタオルをのせるのはどうだろう。かたいおイモも、ゆでたりむしたりすればやわらかくなるのだから、きっとおきゃくさまの毛もあつさでやわらかくなるにちがいない〉
ところがあつくむしたタオルをのせても、針がやわらかくしおれることはなかったのです。

ねこはるさめ について

和歌山県出身。ボランティアでオリジナル童話の読み聞かせ活動をしています。それ以外にも、少し大人びた児童文学テイストな作品を創作。人がいだき育む幻想を紡いだ短編を好んで書きます。 ホームページ:滑空舎 http://kakkusha.sakura.ne.jp/media/