ステルスおばあちゃん(1/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「よし。そうと決まれば」
優しゅうなコスモ博士は、さっそく、研究にとりかかり、あっという間に、明かりセンサーに感知されない装置を作り上げてしまいました。

「名付けて、アンチ・明かりセンサー・デバイス!」
天才コスモ博士の天才的な発明は、うで時計ほどの、ちっぽけな装置。
「母さんがこれをつければ、どんなセンサーにも見つからないぞ!」
体の中の病気を探したり、母親のおなかにいる赤ちゃんの様子を見る時に活やくするエコー、つまり、音波を使っても。
銀行や美術館などにぬすみに入るどろぼうをひっかけて、警報を鳴らすレーザーを使っても。
いえいえ、すごいのは、その装置をオンにすると、光でさえ、ハツさんをとらえることができなくなる! つまり、透明人間みたいに、だれの目にも見えなくなるってことなのです!


「こりゃ、まったく、ステルスっすね!」
コスモ博士の助手をしている多田君も、感心すること、しきりです。
ステルスというのは、戦とう機やドローンが、忍者のように、敵のレーダーから、消えてしまう装置のこと。

「ああ、多田君。これで、わが家の明かりセンサーさわぎがおさまるといいんだがなあ」
キラキラした銀色のデバイス。それには赤い針がついていて、ダイヤルでオンとオフに切りかえられるようになっています。
「母さん、これを身につけてください。オンにしておけば、夜になって、玄関に出ても、センサーの明かりはつきませんから」

研究所から装置を持ち帰って、ハツさんにわたすと、新しい物好きのハツさんは大よろこび。
さっそく、うでにはめて、オンにしたり、オフにしたり。そのたび、ハツさんのすがたが、パッパ、パッパと、現れたり、消えたりします。
試しに、暗くなってから、玄関に出てみても、オンにしていれば、確かに明かりはつきません。センサーにはハツさんが見えないのです。

「どうなの、あなた! 私を見つけてごらんなさい!」
ハツさんが、えらそうに、明かりセンサーと対決しているのを見て、
「これでよし」
と、コスモ博士は大いに満足しました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに