ステルスおばあちゃん(5/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

フハっと、そよ風のように笑うミエンダー氏を見て、ハツさんは、ふと、たずねました。
「あなたも、ワープを使って、地球に来たの? じゃあ、どこかに、巨大な宇宙船がかくしてあるってこと?」
「いえいえ。あんなに大きな乗り物が通るのは無理です」
ミエンダー氏は、マシュマロをぱくつきながら、答えました。

「私たちのワープドアは、ほんの、ささやかなものですから。まあ、水面をくぐるようなものです。キエール星から、ちょちょいの、ちょい」
「そんなに簡単なの!?」
「はい。地球とキエール星は、うす紙1枚でへだてられているような感じです。ぼくは、こうして、ここに座っていても、キエール星のおだやかな海の音が聞こえるような気がしますよ。ただ、ワープドアは、今、メンテナンス中なので、あと、何日かは使えないんですが」

「うす紙一枚、へだてた向こう側がキエール星!?」
ハツさんは、ぞくぞくしました。
どこかに、光るトンネルでもありはしないかと、部屋の中を見回しました。
急に、キエール星が見たくて、見たくて、たまらなくなりました。
キエール星って、いったい、どんなところなのでしょう!? その海はどんな色をしているのでしょう!? 空は? 太陽は? そして、キエール人たちは、どんな暮らしをしているのでしょう!?

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに