ステルスおばあちゃん(6/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

町を一回りして、ハツさんは、ひょうしぬけしました。
「なあんだ。ぜんぜん、平和じゃないの。カラスなんか、どこにもいないし、小鳥たちの巣は空っぽ。子育ての時期がとっくに過ぎて、ヒナたちは、巣立ちしたあと。ああ、あわてて損したわ」
ハツさんはスタングラをオフにすると、
「帰って、ミエンダーさんと、映画を見ようっと。そうだ、新しいのを借りて帰ろう」
と、ビデオショップに入りました。

「何にしようかな? 新作は、まだ、お高いかな?」
店内を探していると、ふと、カウンターの上のテレビの大画面が目に入りました。
美人のアナウンサーが、市民ホールの前で、何か、言っています。ハツさんは、はっと、耳をそばだてました。
『今日、ここ、市民ホールでは、各国の科学者や、政府関係者が集まり、国際平和会議が開さいされます。はるばる、地球から1400光年はなれた星からやってきたお客様の話を聞くためです。講演者のミエンダー・デル・キエールさんは…』
「何ですって!」
ハツさんは真っ赤になりました。

「私をだまして、ミエンダーさんを連れ出したのね、コスモ! そして、多田君! ぜったいに許さないわよ!!」
ハツさんはスタングラのスイッチを入れました。パサッという羽音を残して、ハツさんのすがたは消えました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに