ステルスおばあちゃん(8/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

エピローグ

ハツさんは、それから3年ほどして、また、消えました。でも、こんどは、コスモ博士は探しませんでした。置き手紙がしてあったからです。
「コスモさん、ミエンダーさんが、風船をふくらませなくてもキエール星に行ける方法を考えてくれたので、ちょっと、行ってきます。少し、長くなるかもしれないけど、心配しないでくださいね。じゃ、またね。ハツ」

それから、コスモ博士は、せっせと、スタングラ・デバイスの改良に取り組むようになりました。
「どうしたら、スタングラが、ワープドアをくぐりぬけるように働くのだろう? どうして、母さんだけに、それができたのだろう?」
「先生、まだ、そんなことをしてるんすか!?」
多田君がかけこんできました。

「明日は、ノーベル賞の授賞式に出発しなくちゃならないってのに! スピーチの原稿はできてるんすか!?」
「いや、私は忙しいから、君がやっておいてくれる? そうだ、できたら、授賞式も、私の代理で、君が出てくれるといいんだが?」
「いやあ、おれがっすか? 困るなあ・・・」

でも、まんざらでもないようで、「ええと・・・」と、多田君は、スピーチを考え始めました。
「格調高く、始めないとなあ。『えー、みなさま、本日は、お日がらもよろしく・・・』」
「いいね、そんな感じでたのむよ」
と、コスモ博士。

「すまないね、多田君。今の私には、一刻も、惜しいんだ。どうしても、キエール星に行ってみたくてね」
「そすか・・・」
多田君は、ハツさんが残して行ったスタングラを、なつかしそうに、見やり、
「おれ、分かりますよ、先生の気持ち」
と、いがぐり頭をなでしました。

「そうだ、燕尾服(えんびふく)がいりますよね! おれ、借りに行ってきます!」
多田君が、ばたばたと、出て行くと、コスモ博士は、また、スタングラにかがみこみました。

コスモ氏がどんなに天才でも、今度ばかりは、とびきり、むずかしい問題です。
でも、コスモさんは、決して、あきらめません。
「どうしても、どうしても、もう一度、母さんに会いたいんだ」
がんばるからね、母さん!

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに