チャン! チャン! チャン! チャン! チャン小熊ねずみー!(4/7)

文・くまもり こぐま  

<その4>
ノンノン、ノンノン。
バスはのどかな音を立てて走り出しました。
ひざの上のボールをギュッとかかえながら、口を真一文字につむり、チャン小熊ねずみはひっしになみだをこらえていました。
チャン小熊ねずみの心は不安でいっぱいです。
けれど不安な気持ちはだれにも分かってもらえないのです。

本当はこんな時こそボールをつきたいのですが、ボールをついたらバスからおりなければなりません。そうしたらおばあちゃんのお見まいに行けないのです。
バスはのはらをこえ、山をのぼり、川ぞいの道を進みました。
ボンボンボンボンボン、ボンボンボンボンボン。
ボンボン時計が十回なりました。

「十時だ、十時だ。お十時になりましたよ」
うれしそうなかおでイノシシのうんてんしゅさんが言いました。
「おお、十時か」
ヤマネのおじさんがあくびをして言いました。
「さあさあ、お十時よ」
アナグマのお母さんの明るい声も聞こえます。
(お十時ですって?)
チャン小熊ねずみはボールをかかえながら首をかたむけました。(次のページに続く

くまもり こぐま について

東京生まれ。旅行誌のライターを経てシナリオを書き、その後子供の頃からの夢であった児童文学作家を志しました。童話コンクールで賞をいただいたことをきっかけに、子供だけでなく、大人の心にも寄り添うような作品を書けるようになれたらと思っています。ほのぼのとしたかわいい作品だけでなく、心に迫るような現実を取り扱う作品も書いてます。どうぞよろしくお願いします。