ナイト(2/5)

文・中村文人  

そう、オレの仕事はネズミ狩り。
ネズミの社会で育ったオレは、ネズミのことを知りつくしている。
これはぴったりの仕事だ。

「お帰り、ナイト。ごくろうだったな」
神田博士の研究所に帰ると、博士はオレの背中から金属の箱を取りだした。
そしてごほうびに、もとの大きさにもどったオレの前にキャットフードの皿をおいてくれた。
「博士、ネズミたちをなぜつかまえるんですか?」
写本 -10サイボーグのオレには、人間とも話せる機能がついている。
「ネズミはきたないだろう。ばい菌を運んで人間に病気をうつすからな」
「人が病気になっては大変ですからね」
オレは、皿をきれいになめた。
「それに最近ネコは、ネズミをこわがって取ろうともしない。おまえのようなネコがいてくれて、とっても助かるんだ」
博士は鼻歌をうたいながら、ネズミの入った箱をベルトコンベアに乗せ、スイッチをポンとおした。
グゴゴゴー
にぶい音がして、箱はとなりの部屋に運ばれていった。

「12地区のネズミは全部つかまえたな。ナイト、あしたは13地区をまわってくれ」
13地区というと、オレをかわいがってくれたロルフじいさんたちのグループが住んでいるところだ。
「博士、ネズミたちは、となりの部屋でどうしているのですか?」
「どうしてそんなことを聞くんだ、ナイト」
「友だちのトーマスもつかまえてしまって、気になったものですから」
「友だち? きたないネズミを友だちなんて思うものじゃない! よけいなことを考えるんじゃない」
「はい、ばい菌だらけのネズミをつかまえないといけませんね、博士」