ナイト(3/5)

文・中村文人  

次の日、おれは13地区に向かった。
2年ぶりだ。様子はあまり変わっていない。
ビルの地下室に入ると、3匹の子ネズミがいた。
オレの姿をみつけると、逃げもせず近寄ってきた。
「あ~、ナイトさんでしょ? とうちゃんから話を聞いてるよ」
「えっ、あなたが、伝説のネコ、ナイト?」
「ああ、ナイトだけど、伝説って何だ」
写本 -5197ネズミをつかまえにきたのに、親しげに話しかけられ、オレはとまどった。
「だってネコなのに、おいらたちネズミと仲良くしてくれて、いろんなことに力をかしてくださるすばらしい方だもの」
「ちょっとまってて。とうちゃんをよんでくるから」
いつの間にかそんな伝説になってる・・・。
そんなことはどうだっていい。こいつらをつかまえなければ、オレを助けてくれた博士やほかの人たちが病気になってしまう。
思い直し、オレは巨大ネコに変身した。
「きゃー、ナイトさんが!」
子ネズミが金切り声をあげた。
大声をだされるとまずい。オレは前足で子ネズミをおさえつけた。

そのときだ。
「やめなさい!」
声の方向に顔を向けると、1匹のネズミがいた。
ネズミは黒くきたないのに、そいつは銀色にかがやくように見えた。
なんてきれいなんだ。はっと息をのんだひょうしに、前足の力をゆるめてしまった。
「ねえさま、助けてー、ナイトさんがー」
「ナイトなの? 私はロルフおじいさまの孫、サラよ」
サラ? あのサラか?
オレが知っているのは赤ん坊のときのサラ。こんなに大きく、美しくなっていたのか。