ハトのオイボレ、最後の冒険(7/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「蔵王まで行くだって!? グエー、グエッヘッヘ!」
マママガモは笑い出しました。
「蔵王まで行くんだって、グエッヘヘ!」
「蔵王までだって、グエ!」
「蔵王ってどこ?」
伝言ゲームも続きます。

「おまえのそのようすじゃ、とても無理だよ。もう、へろへろじゃないか。たどり着く前に、どっかの森に落っこちて、ノネズミのえさになるのがせいぜいさ」
オイボレは、キュッと、口を結んで、飛び続けました。
『ノネズミのえさなんかになるもんか!』
と、大いに腹を立てていましたが、それでも、どんどん、高度が下がって行くのを、どうすることも出来ません。

その時、マママガモがさけびました。
「全員、シフト! フォーメーション・コード、オメガ・ワン・スリー! グエー、グエー!」
それと同時に、マガモたちがおたがいの場所を入れ変え始めました。
うるさいママはオイボレのそばから消え、代わりに、少し、小さめのマガモが、オイボレのすぐ前を飛び始めました。

「いいかげんにしてくれ。どうか、じゃましないでくれ」
オイボレは泣きそうな声でたのみました。
ところが、小さめのマガモはオイボレをふり返り、
「おじいさん、うまく、ビート、合わせてね」
と、パチンと目をつぶったのです。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに