ハトのオイボレ、最後の冒険(6/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「オーイ、どこまでにげる気だい、オイボレハト君!? むだなていこうは止めて、さっさと、おれたちのおやつになりたまえ!」
ガアガアと、カラスはばかにします。
「どうしよう、このままじゃ、ほんとに、おやつにされてしまう・・・」
追いつめられたオイボレは、思わず知らず、駅へと向かっていました。

「あっ、あれは!」
オイボレは、力をふりしぼって、ペデストリアン・デッキにつっこんで行きました。
カラスたちは、カカカッと、笑いました。
「ばかだなあ。同じ手がおれたちに通用するもんか!」
カラスたちも、あらあらしい羽音をさせて、オイボレを追って来ます。
「オイボレハト君、今度はトンビの群れの中にでも、つっこむつもりかい?」
カカッと、カラスが笑った時です。

「ムギャー! ぼくのところにだよ!」
と、1羽目のカラスに強れつなネコパンチが飛びました。
実は、オイボレが飛び立った後、チェシャは気になって、しばらく、その行方を目で追っていました。
ハトの姿を見失ったので、その場を立ち去ろうとした時、チェシャのよく聞こえる耳が、町のどこかで、カラスが大さわぎしているのをとらえました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに