バイバイパンダパン(3/4)

文と絵・満月詩子

「あれ? 結那ちゃん?」
そのとき、結那の後ろから、ほんわかと温かな声が聞こえました。
包みこむような声にふりむくと、そこにはアンジさんがいました。

「あっ・・・アンジ・・・」
ホッとした結那は、そのまま泣き出してしまいました。
「どうした? あれ? もしかしてお使いたのまれたのかい? ここのカラアゲ売り切れ早いからなぁ。こまったねぇ」
オレンジ色の光のような声音が心にしみ込んで、結那は涙が止まりません。

「そうだなぁ・・・う~ん。よしっ! ここほどおいしくはないけど、おじさんがカラアゲ作ろうか? それ持って帰ったら結那ちゃんもにんむ完了ってことで。って、お母さんにはばれちゃうね。でも、許してくれると思うよ。今日は、おじさんがお母さん引きとめちゃったしね」

アンジさんは、しゃがみこんで結那を見つめます。
お日さまのようなアンジさんの笑顔からふりそそぐ温かさが、しおれてしまった結那の心に力をそそぎます。
結那の心に、少しずつ光が広がっていきました。
光は熱となり、勇気をつくりだしました。
「ち、ちがうの。・・・お母さん、お母さんが」

結那は、しゃくりあげながら必死に言葉をつむぎました。
しかし、上手く話すことができません。
自分でも、どう説明したらいいのか、わからないのです。
下を向いた結那の目に、とっさに持って出たお出かけバッグがうつりました。

満月 詩子 について

(みつき うたこ) 佐賀県生まれ、在住。学校図書館勤務を経て、福祉関係の仕事に就く。現在は、仕事以外に、ボランティア活動なども行いながら、絵本や児童書の創作を続けている。日本児童ペンクラブ、日本児童文芸家協会会員。 2012年、『その先の青空』で、第15回つばさ賞、佳作に入選 おもな著作に、『さよなら、ぼくのひみつ』【『さよなら、ぼくのひみつ』(国土社)に収録】。『たまごになっちゃった?!』【佐賀県DV総合対策センター発行】、『あかいはな」』【『虹の糸でんわ』(銀の鈴社)に収録】などがある。