バイバイパンダパン(4/4)

文と絵・満月詩子

「・・・ゆい・・・結那(ゆいな)」
あたたかい手が、結那の肩にやわらかくふれました。
結那は、もぞもぞと首をふりました。

「う~、う、うんん・・・あっ、お母さん」
目に飛び込んだお母さんの姿に、結那は、すっくと体を起こしました。
そして、うでをせいいっぱいのばすと、お母さんをつかみました。
「おかあさん、おかあさん」
泣きながら胸にしがみつきます。

「ごめんね、心配かけて」
マスクごしに聞こえるお母さんの声にも、涙がにじんでいます。
お母さんのにおいにホッとした結那は、顔をあげると、不思議そうにあたりを見回しました。
窓の外は、すっかり暗くなっています。

「結那、心配しすぎてつかれちゃったんだね。ねちゃったからって、アンジさんがふんわりパンに連れてきてくれたんだよ」
「ありがとう、もう大丈夫だからね」と言いながら、お母さんは結那を抱きしめました。

満月 詩子 について

(みつき うたこ) 佐賀県生まれ、在住。学校図書館勤務を経て、福祉関係の仕事に就く。現在は、仕事以外に、ボランティア活動なども行いながら、絵本や児童書の創作を続けている。日本児童ペンクラブ、日本児童文芸家協会会員。 2012年、『その先の青空』で、第15回つばさ賞、佳作に入選 おもな著作に、『さよなら、ぼくのひみつ』【『さよなら、ぼくのひみつ』(国土社)に収録】。『たまごになっちゃった?!』【佐賀県DV総合対策センター発行】、『あかいはな」』【『虹の糸でんわ』(銀の鈴社)に収録】などがある。