ビバ・ネバル!(2/6)

文と絵・高橋貴子

「おまえさんの糸で、すを作ってくんないかな。おれのは、ほぼ使いきっちゃったんだ」
ぼくはうれしくなってさけんだ。
「いいよ! じゃあ、いっぱいねばらなきゃ。なにか入れものがほしいな。・・・あ、いいの見つけた」
かれ葉の間に、ぼうしをかぶった丸いどんぐりがおちていた。ぼうしの先を両手でひっぱった。うまいぐあいにすぽんとぬけた。ぼうしをもって木の上にあがると、ぼくはその中に入った。

「かきまぜてみて」
「こうかい?」
クモは前足をおそるおそる入れた。
「やあ、おもしろい。糸が出てきた。どうせなら・・・」
クモは8本の足ぜんぶをぼうしの中に入れて、かき回し始めた。
しばらくすると、ぼくのからだはたくさんの糸でくるまれた。

「このねばりぐあいなら完ぺきなすができるぞ」
クモが目をかがやかした。
「まず、たて糸はおれがはるからな。家の中を歩くにはつるつるの糸じゃなきゃいけない」
「きみ、ねばらない糸も出せるの」
ぼくが感心している間に、数本の糸が木と木の間にかけられた。

「次はおまえさんの番だ。今日は風があるから、楽しいぞ」
ぼくはクモのいうとおりに糸の間をとんだ。
「えいや!」
風にのってとぶと、うまく次の糸にうつれた。ぼくのからだの後について、糸がふんわりと空をまう。何回もぴょんぴょんとんでいるうちに、たくさんの円があるりっぱなすができた。
ぼくはそのまん中にすわり、ねばり気たっぷりのぴかぴか光るすをながめた。
なによりうれしかったのは、クモが大よろこびしてくれたことだ。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。