ビバ・ネバル!(3/6)

文と絵・高橋貴子

「おまえさんは世の中のことをなんにも知らないんだな。おれの家がベタベタしているのは、えものをとるためじゃないか」
じゃあ、じゃあぼくのせいでこの子はつかまり、そして友だちのモックに・・・。

ぼくは食べられるのこわくないけど、この子はそうじゃないみたいだ。
だってこんなにからだをふるわせて泣いているもの。

次のしゅんかん、ぼくは糸をぷちぷち切り始めていた。からだが自由になったチョウはぼくをにらみつけると、ひらひらと暗い空にとんでいった。
「おい、なにするんだ!」

さっきまでやさしかったモックがぼくにつめよった。今までぼくが見た中で一ばん、虫のいどころがわるい目をしていた。
ぼくはゆうきを出していった。
「きみにはわるいけど、ぼくの糸でだれかをこわがらせたりするのは、いやなんだ」
モックはくるりとうしろをむくと、はきすてるようにいった。

「ああ、そうかい。おまえさんは、とんだじゃまものだったんだな。早くここから出て行ってくれ。すをつくるんだから」
(つくれるんじゃないか・・・)
ぼくはまたとぼとぼと森の中を歩きはじめた。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。