ペンギンのアディ(10/10)

文・伊藤由美  

「すごいなあ、トトは。アホウドリでもできないのに、あんな小さい体で、天国までも飛んで行けるんだから」
アディは、トトが消えたのを見とどけると、また、スイスイ、泳ぎ出しました。
「あたしも、いつかは、神様にたのんで、つばさをもらうわ。そして、トトや、モルテンといっしょに、世界を見て回るの。
わくわくする!
でも、とりあえず、当分はペンギンで。
もっともっと、いろんなことを知らなくちゃ。
それはともかく、どこへ行ったら、モルテンに会えるのかな?
スクアノタカラを、どうやって、返そう・・・」
考えながらおよぐアディは、行く先の水平線が、どんどん、明るくなって、ついに、太陽が顔を出すのを見ました。

海はどこからどこまで金色です。
イルカがいます。
クジラもいます。
そして、もちろん、ペンギンたちも。

「アディ! アディじゃないか!」
「そうだ、アディだ!」
ペンギンたちは、ぞくぞく、アディのまわりに集まってきました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに