ペンギンのアディ(8/10)

文・伊藤由美  

次のしゅんかん、緑の光は、波のように大きく広がって、うずを巻きながら、空全体を、さあっと、あらいました。
あまりの明るさに、星々はかくれ、アディは、赤い星を見失いそうになりました。

「大変だわ! 早く、じゅ文を言わないと! ンギャッギャ、ンギャッギャだってば!」
あせればあせるほど、頭の中は真っ白です。
「落ち着くのよ、アディ」
アディは目を閉じ、ゆっくり、モルテンとの練習を思い出しました。

「モルテンの・・・、名にかけて・・・」
目を開けた、ちょうど、その時、オーロラが切れて、赤い星が、くっきり、見えました。
「ギャアギャア、ギャギャン、ンギャー!」
赤い星から一筋の光がスクアノタカラに差しました。すると、それは、まさに、星と同じ色に、キラキラと、かがやき始めたのです。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに