刺繍で描く、世界中の子どもたちの寝る姿

ここがわたしのねるところ―せかいのおやすみなさい

レベッカ・ボンド 文 サリー・メイバ― 作画
まつむら ゆりこ 訳
福音館書店 2022年2月5日刊

◆世界によって違う寝方

今回ご紹介する作品は刺繍で彩られた美しい絵本です。
皆さんは世界中の子どもたちがどんな場所でどんな風に寝ているのかをご存知ですか? 私はよく知りませんでした。
「寝る」という暮らしの一部分に注目し、世界の様々な国、地域、気候や生活様式の違いによってどのように異なるのか?ーーそれを表現したこの絵本に出会い、新しい発見の連続でした。

私も子どもにかえったかのように目をこらし純粋に楽しんでしまいました。
例えば、オランダの子どもは、川や運河が多い土地柄から、屋形船のベッドでゆらゆら波に揺られながら寝ている姿が描かれています。
熱さの厳しい中東のイランの子どもは、夏の夜になると高い壁で囲まれた涼しい外の中庭で寝ています。
もちろん日本の子どもが畳に布団を敷いて寝る姿も描かれています。世界によって全然違うんですね。

そして、この絵本の最大の魅力はそれらを刺繍で表現している点です。
民族衣装や寝具のカラフルな色合い、独特な図柄や伝統的な模様などを丁寧に研究し表現されています。
手縫い刺繍の温かみと、子どもが安心して寝ている幸せそうな寝顔によって、見ている読者の心が自然とほんわかとした優しい気持ちにもなります。(次ページに続く)

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】